歌うことの重要さはいくら強調してもしすぎることはない!
同じ教本を使っていても、進み方はもちろんさまざまで、同じように上達するということはない。
なかなか思うように進まない子の特徴のひとつに「聴いていない」ということが挙げられる。
自分が鳴らしている音を聴いていない。
聴くという行為は本当にごく個人的な行為で、人がどのように音を聴いているかは、目に見えないし、わからない。
ピアノをぽつぽつと弾き、曲になかなか馴染まない、何度も練習しているのに、どこかカタコトで喋っているようで音楽が流れていない。
よく聴いていないから曲が掴めず、ポツポツも弾くので、余計に曲として捉えられない。
上達が速い子というのは、練習の量ももちろん大きく影響するけれど、はじめての曲を自分で鳴らした時に、「こういう曲だな」と大まかな流れを掴むことができるのだと思う。
鳴らした音を曲の流れとして良く聴いている。
練習で演奏するたびに、弾きながら聴き、曲の輪郭は強化されていく。
好循環が生まれている。
一方、注意深く聴いていない子は、自分が鳴らす音がなかなか繋がらない。
こういうタイプの生徒さんは、「ららら〜」でいいから歌ってみて、と歌わせると全く歌えない。
こんなに繰り返し練習しているのに!?!?
練習中に自分が鳴らしている音を聴いていないから、歌おうとすると、はじめての曲のように探り探り歌う。
こういう時はレッスンの半分ぐらいは歌うことにしている。
ドレミで歌う譜読みを兼ねたソルフェージュとは違い、とにかく音をよく聴き、その音と同じ高さの声を出そうとすることが目的。
私がピアノを弾いて、
生徒さんには「ららら」で歌う。
ピアノと同じ音を出すようによく聴いてね、と声をかける。
はじめは音が取れないことが多く、はちゃめちゃな音程になるけど、きっと、本人はピアノと合わせているつもりなのだろう。聴いているつもりだから。
もっと、もっとよく聴いて、こんな音だよ。
など繰り返し繰り返し注意深く聴くことを促す。
すると、次第に声はピアノに合ってきて、曲が掴めてくる。
そうすることで、ピアノの演奏がガラッと変わる。
歌で覚えてからピアノを弾くと、楽譜を読まなくなるのではないか?と懸念されることもあるけれど、ドレミで歌うわけではないので、この場合鍵盤とは直接繋がらない。
歌うことで曲の流れを感じることができて、自分が鳴らしている音も聴こえてくるのだろう。
歌うことと聴くこととピアノを弾くことは、がっちりと密接に繋がっている。