これまで弾いた中で、いちばん好きだった曲は何?と聞いたら小さい頃に弾いたポピュラー曲を挙げた中学1年生。
んー(´-`).。oO
そうかそうか。
んー。もう6年前だと思うけど、、、
今はクラシックの曲を中心に演奏しているけど、、、
どおりで最近気乗りしていないようだ。
途中から教室を変えてうちに来た生徒さん。
ほとんどレッスン中は話をしない。お母さんがよく話をするので、彼女の言葉がなかなか出てこない。
なるべく質問をしてきたけれど、
「まぁまぁ‥」とか、
「ふつう‥」とか。
普段からこうなのよぉ。こまっちゃうわぁ。とお母さん。
ひとりでレッスンに来るようになって、やっと彼女の言葉が出てきて嬉しい反面、6年前の曲が1番って、なかなか衝撃的。
発表会やおさらい会でもそつなくこなして弾いていたけれど、思い入れがないんだろうなぁ。
ポピュラー曲を弾くのも全然いいし、そこの垣根なく、クラシックもポピュラーも弾けばいいと思っているけれど、こちらが思っている以上にクラシック曲との接点を生徒さんは感じられないのかもしれない。
クラシック曲の良さや面白さがある。それをせっかくクラシックな楽器を演奏しているのだから味わってもらいたい。
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またある別の生徒さんに渡した全音のソナチネアルバムを、ピアノの経験がないお母さんがびっくりして、いかにもつまらなそうだと冗談混じりに言った。
(そのお母さんとは公私とも仲が良く正直なところがすごく好き。)
「はは!文学全集みたいに見えます?!」と、咄嗟に言ったものの、あれは言い得て妙だった。
「お母さんがそれを言っちゃあダメよー。」とこちらも冗談混じりに返したけれど、そう見えているのだから仕方がない。
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マンガばかり読まずに本を読め、とよく親に言われた。ティーン向けの小説を読んでいると、ちゃんとした本を読めと文学全集を指して言われた。
面白くなさそうだから全然読む気にならなかった。
あの時の気持ちと、あのお母さんや生徒さんがクラシックに対する気持ちは近いのかもしれない。
あの時は自分との接点がなさすぎると思っていた。とにかく現実的に近いものが魅力的だった。
自分に近い環境の主人公が恋や友人関係に悩むさまを読む方が楽しかった。
文学全集に載っているようなものを読むようになったのは、その数年後、現代文の問題集で出てきた文章に感動して、作者をメモり、本屋さんに向かった時からだ。
感動してはじめて自分から近づいた。
ピアノのレッスンは、その時の「現代文の問題集」の役割を引き受けるしかない。
いつか心に響くかもしれない種を蒔いておくことをするしかない。
そればかりだと苦しいから、生徒さんの興味と関心も引き受けて、身近な楽しみも共有しながら。
だからといって興味がなさそうだからと舵を切って、全くクラシックの曲を扱わないのも違う。バランス感覚が試される。
もしかしたらずっと響かずにやめていくかもしれないけれど、いつか届くと信じて、自分がいいと思ったものを示し続けるしかない。
だって、絶対面白いから。